神戸地方裁判所 平成5年(ワ)2243号 判決 1996年1月18日
原告
坂部光男
被告
淡路交通株式会社
主文
一 被告は、原告に対し、金四七万〇九九二円及びこれに対する平成四年八月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを二〇分し、その一九を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告に対し、金一〇〇〇万円及びこれに対する平成四年八月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 本件は、後記交通事故により傷害を負つたと主張する原告が、被告に対し、自動車損害賠償保障法三条に基づき、損害賠償を求める事案である。
なお、付帯請求は、後記交通事故の発生した日の翌日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金である。
二 争いのない事実
1 原告のバス乗車
原告は、平成四年八月一七日午前一〇時四六分ころ、兵庫県津名郡一宮町明神五四五番地の一先所在の被告の「草香明神」バス停留所(以下「本件バス停」という。)から、訴外一ノ木俊夫(以下「訴外一ノ木」という。)運転のワンマンバス(神戸二二か四四七六。以下「本件バス」という。)に乗車した。
2 責任原因
被告は、本件バスの運行供用者であり、自動車損害賠償保障法三条により、本件バスの運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責任がある。
三 争点
本件の主要な争点は次のとおりである。
1 原告の主張する交通事故(以下「本件事故」という。)発生の有無
2 被告の主張する免責の抗弁の成否
3 過失相殺
4 原告の損害額
四 争点に関する当事者の主張
1 争点1(本件事故の発生)
(一) 原告
原告が本件バス停から本件バスに乗車し、乗車ステツプの最上段に昇つて座席にすわろうと進みかけた時に、訴外一ノ木は、本件バスを急発進させた。このため、原告はバランスを失つて後方に倒れ、第九胸椎圧迫骨折の傷害を受けた。
(二) 被告
本件事故の発生を争う。
原告は、バス乗車中及び下車の際、訴外一ノ木に本件事故の発生を申告しておらず、翌日になつて初めて、営業所に右申告があつた。
そして、原告の述べる本件事故の態様は転々と変遷しており、本件事故の発生自体が疑わしい。
2 争点2(免責の抗弁)及び争点3(過失相殺)
(一) 被告
仮に本件事故が発生していたとしても、被告及び本件バスの運転者である訴外一ノ木は、自動車の運行に関し注意を怠らなかつた。
すなわち、本件バスはワンマンバスであり、乗車口には乗客を感知するセンサーが設けられており、訴外一ノ木は、最終の乗客である原告が右センサー線を超えた後、乗車口の扉が閉まるまでの約二秒間、車内の安全を確認した。そして、その後、車外の安全の確認に移つたが、本件バス停は非常に複雑な地形に位置しており、バスを発進させるに際して周辺道路の安全を確認するには約七秒間を要する場所にある。
そして、バスを取り巻く周辺道路の状況は刻々と変化するから、バス運転手は、車外の安全を確認した後直ちに発進することが必要で、引き続いて乗客が着席したことまでを確認する注意義務はない。
他方、バス乗車客は、右センサー線を超えた後、右合計である約九秒の間に座席に座つたり、吊革や手すりを持つてバスの揺れに伴う危険を未然に防止すれば足りるのであつて、バス車内にもその旨の表示がされている。
特に、本件の場合には、バスの後部座席はほとんど空席であり、右時間内に座席に座らず、しかも、吊革や手すりを持つことなく転倒した原告には、過失があるというべきである。
なお、本件バスは、最終の乗客が右センサー線を超えた後、約六・五秒を経過した後でなければ、アクセルが作動しない構造になつており、他にも構造上の欠陥及び機能の障害はなかつた。
したがつて、自動車損害賠償保障法三条ただし書により、被告には、原告に生じた損害を賠償する責任がない。
(二) 原告
バスの運転手は、乗客の安全に充分に注意を払いながら運転をする注意義務がある。
特に、本件の場合には、訴外一ノ木は、原告が乗車口近くの空席に着席することを充分に予測することができ、かつ、原告が要保護性の強い高齢者であることも認識していたのであるから、同訴外人に過失がないとは到底いえない。
第三争点に対する判断
一 争点1(本件事故の発生)
甲第一号証、第四ないし第一七号証、乙第一〇号証の一ないし三、第一一号証の一ないし六、原告本人尋問の結果によると、本件バスが本件バス停を発車する際、原告が転倒し、傷害を負つたことを優に認めることができる。
被告は、原告の述べる本件事故の態様は転々と変遷しており、本件事故の発生自体が疑わしい旨主張するが、証人藤木孝雄の証言によつても、本件事故に関する原告の供述は、主要な点については一貫していることが認められ、甲第三号証の存在をも考えると、右認定を左右するに足りる証拠はない。
二 争点2(免責の抗弁)
1 乙第五号証の一及び二、第七号証の一によると、本件バスの諸装置及びその操作方法について、被告には次の定めのあることが認められる。
(一) 運転席にある乗車口扉の開閉レバーを「開」に倒し、扉を開ける。
(二) 乗車口全体及び乗車扉の外約一・五メートルの範囲の乗車客の乗車状況を、バスの車内前部上のルームミラー及び車内後部乗車口上の凸面ミラーで確認する。
(三) 最終の乗客が乗車を終えたのを確認して、乗車口扉の開閉レバーを「閉」に倒す。
(四) (三)の操作をすると、予告ブザーが約一・二秒鳴り、その後、扉が閉まり始める。
なお、本件バスの乗車口の段は、第一ステツプ、第二ステツプ、床面からなり、乗客を感知するために第二ステツプに設置されているセンサー線を乗客がさえぎつているときは、乗車口扉の開閉レバーを「閉」に倒しても扉は閉まらない。
また、扉が閉まり始めるのは、最終の乗客が右センサー線を完全に離脱してから約一・五秒を経過した後であり、扉が完全に閉まり終えるのは、右離脱後約五秒を経過した後である。
(五) 扉が完全に閉まつた後、約一・五秒を経過した後、エンジンアクセルが作動できる状態になる。
(六) その後、バスを安全に発進させるため、バスの前方、側方、後方の車や人の動静に注意して、バスの発進の安全の確認に移る。
2 これによると、バスの運転手は、エンジンアクセルが作動できる状態になつてはじめて、バス車外の安全の確認に移るべきであつて、それまでの時間、すなわち、最終の乗客が右センサー線を完全に離脱してから約六・五秒の間は、バス車内の乗客の動静に注目すべきことが、被告においては定められているというべきである。
これを、バス運転手の注意義務の点から考えると、乗車口扉が閉まらなければエンジンアクセルが作動しない構造になつているとはいえ、装置の故障等もありうることから、安全確認のために、乗車口扉が完全に閉まり終えたことを、バスの車内前部上のルームミラー及び車内後部乗車口上の凸面ミラーを通じて、自らの目で直接確認すべきであり、このことはバス運転手の基本的注意義務であるというべきである。
また、証人一ノ木俊夫及び証人藤木孝雄の各証言、弁論の全趣旨によると、バス運転手が車内の確認をするのに要する時間は、三ないし三・五秒であること、バスを取り巻く周辺道路の状況は刻々と変化するから、いつたん、バス運転手が車外の安全を確認した後には、直ちにバスを発進させることが必要であることが認められる。
そうすると、バス運転手としては、少なくとも、乗車口扉が完全に閉まり終えたことを自らの目で直接確認するまでの約五秒間は車外の安全確認の作業に移るべきではなく、被告は、右時間及びそれに続く約一・五秒間の合計約六・五秒間を、乗車口扉が完全に閉まり終えたことを確認するとともに、車内におけるバス乗客の動静に注意を払うべき旨定めたというべきである。
なお、被告の主張の中には、バス運転手は、最終の乗客が右センサー線を完全に離脱してから約二秒間、車内の動静に注意を払えば足りる旨の部分があるが、乙第七号証の一の文言及び右認定のバスの運転手の基本的注意義務の内容から考えて、右主張を採用することはできない。
3 ところが、証人一ノ木俊夫の証言によると、本件事故の際、バス発車前に同人が一番最後に原告を見たのは、原告が第二ステツプにいる時であつたこと、同人は、乗車口扉の開閉レバーを「閉」に倒すと同時に車外の安全確認に移つたこと、車外の安全確認に移つてからバス発車までは車内の様子を見ていないこと、本件バス停において、車外の安全確認をするのに約七秒を要すること、発車してしばらくしてから乗客の様子をルームミラーで確認したことが認められる。
そして、これを1で認定した被告の定めと比較すると、訴外一ノ木は、(三)の段階後直ちに(六)の段階に移り、(六)の作業中である約七秒の間に(四)及び(五)の段階が進行しているのであつて、結局、同訴外人は、乗車口扉が完全に閉まり終えたことを自分の目で確認しておらず、かつ、最終の乗客である原告が第二ステツプから床面に上がる時以降は、車内の乗客の動静に全く注意を払つていない。
したがつて、本件事故の際の訴外一ノ木の一連の動作は、被告の定めた手順にも違反しており、かつ、右違反部分はバス運転手の基本的注意義務に関するものであるから、同訴外人に過失がないとは到底いえない。
なお、訴外一ノ木の右一連の動作が、日常的に行われていたものか、本件バス停の状況に応じて臨機応変にとられたものかは定かではなく、被告の主張の中には、本件バス停の特殊な状況を指摘する部分がある。
しかし、1及び2で認定したとおり、バス運転手としては、1(一)ないし(五)記載の手順により、バスの車内の状況を完全に把握した後に、1(六)記載の車外の安全を確認する作業に移るべきであつて、車外の状況は、1(六)の作業時間を左右することはあつても、1(一)ないし(五)記載の手順に影響を与えることはない。ところが、訴外一ノ木は、乗車口扉の開閉レバーを「閉」に倒すと同時に、漫然とバスの車外の安全を確認する作業に移つているのであるから、被告の右主張を採用することができないことは明らかである。
4 以上によると、被告主張の免責の抗弁は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。
三 争点3(過失相殺)
争点2に対する判断で判示したとおり、訴外一ノ木には、車内の動静に全く注意を払うことなく、本件バスを発車させた過失があるが、右発車は、最終の乗客である原告が右センサー線を完全に離脱してから約七秒後であつたことが認められる。
また、甲第四号証、乙第二号証の一ないし四、証人一ノ木俊夫の証言、原告本人尋問の結果によると、本件事故当時、本件バスには空席が多く、原告が速やかに着席し、又は、吊革や手すりをつかむのに何の支障もなかつたことが認められる。
そして、バスの乗客には、乗車に際し、バスの円滑迅速な運行に配慮し、できるだけ速やかに着席するか、吊革や手すりをつかみ、バスの発進や揺れに伴う危険から自己を守るため努める義務があるというべきであるから、これらの義務を十分に果たすことなく、本件バスの発進の際に転倒した原告には、過失相殺すべき過失があるというべきであり、これらの事実に原告の年齢(甲第一号証、弁論の全趣旨により、本件事故当時、満七三歳であることが認められる。)を併せ考えると、本件事故に対する原告の過失を三〇パーセントとするのが相当である。
四 争点4(損害額)
争点4に関し、原告は、別表の請求額欄記載のとおり主張する。
これに対し、当裁判所は、以下述べるとおり、同表の認容額欄記載の金額を、原告の損害として認める。
1 損害
(一) 治療費
(1) 御影外科
原告の主張する金六六万〇九七〇円の他に、被告は、文書料金三〇九〇円を加え、金六六万四〇六〇円である旨主張する。
ところで、乙第一〇号証の四によると、右文書料金三〇九〇円は被告が支払つたことが認められるところ、本件全証拠によつても、右文書が保険会社等の第三者との関係で使用されたものか、被告の内部処理に要したものかが明らかではない。
そして、争点3に対する判断で判示したとおり、本件が過失相殺を要する事案であることに鑑み、右文書に関する費用は、損害の発生及び損害の填補のいずれにも計上しないこととする。
(2) 六甲病院
金五五万〇二八〇円であることに当事者間に争いがない。
(3) 小計
(1)及び(2)の合計は金一二一万一二五〇円である。
(一) 看護料
(1) 御影外科
原告が金二七万七七二〇円であると主張するのに対し、被告は金二八万四二二〇円であると主張する。
そこで検討すると、乙第一二号証の一ないし五によると、御影外科の看護料は、次の合計金二七万七二二〇円であることが認められる(被告が指摘する乙第一二号証の六の金七〇〇〇円は、御影外科の看護料とは直ちには認められない。)。
乙第一二号証の一 金一二万五六〇〇円
乙第一二号証の二 金一万三〇二〇円
乙第一二号証の三 金一万〇四〇〇円
乙第一二号証の四 金一〇万三〇〇〇円
乙第一二号証の五 金一万三二〇〇円
右同 金一万二〇〇〇円
そして、右金額は、原告の主張金額よりもさらに少額のため、当事者間に争いのない金二七万七七二〇円を御影外科の看護料と認める。
(2) 六甲病院
金一四万九一四〇円であることに当事者間に争いがない。
(3) 小計
(1)及び(2)の合計は金四二万六八六〇円である。
(三) 入院雑費
甲第五号証によると、原告が、平成四年八月一八日から同年九月一一日まで御影外科に、同日から同年一一月八日まで六甲病院に入院したことが認められ、右入院日数は合計八三日間である。
そして、入院雑費は、入院一日あたり金一三〇〇円の割合で認めるのが相当であるから、次の計算式により、金一〇万七九〇〇円となる。
計算式 1,300×83=107,900
(四) 通院交通費
甲第八号証によると、原告は、平成四年一一月九日から平成五年三月一〇日まで、本件事故による第九胸椎圧迫骨折等の治療のため、六甲病院に通院したことが認められ(実通院日数三五日)、右傷害の内容、原告の年齢と原告本人尋問の結果により認められる右傷害の具体的な症状とを併せ考えると、右通院のために要したタクシー代は、必要かつ相当なものとして、本件事故による損害というべきである。
そして、甲第一九号証の一及び二、原告本人尋問の結果によると、通院片道のタクシー代が金七八〇円であることが認められるから、通院交通費は、次の計算式により、金五万四六〇〇円である。
計算式 780×2×35=54,600
(五) 休業損害
甲第一八号証、第二〇号証の一ないし五、第二一号証の一ないし八、乙第一四号証の一及び二、原告本人尋問の結果、弁論の全趣旨によると、原告及び原告の妻である坂部万亀子は、麻雀店「クラブK」を経営していること、同店の風俗営業許可は原告の妻の名義で取得されているが、実際には、同店は原告が中心となつて営まれていること、税務申告上も同店の営業収入は妻の名で申告されていること、本件事故の前年である平成三年の同店の売上は金八八四万六〇〇〇円、経費は金七五三万〇八三八円、右両金額の差引金額は金一三一万五一六二円と申告されていること、実際には同店の利益は右金額以上であるが、これを確定する資料が存在しないこと、原告の本件事故による傷害及び後遺障害のために、平成五年八月まで原告の子の妻である坂部小夜美が原告の代わりに同店で働き、本件事故後も同店は営業を継続したこと、原告が店を休んでいる期間、店の売上は減少したが、これを確定する資料が存在しないことが認められる。
ところで、自営業者が休業した場合、代替労働力を利用して、事業の維持・存続が図られたときには、それに要した必要妥当な額を休業損害とするのが相当である。
そして、右認定事実のもとでは、同店の申告上の収入額である年金一三一万五一六二円の六〇パーセントを同店の収入に対する原告の寄与割合とし、右寄与割合に対応する金額を基礎として、右認定の原告が入院を開始した平成四年八月一八日から甲第一七号証によつて認められる症状固定日である平成五年三月一〇日までの二〇五日間に相当する金額を、代替労働力を利用するのに必要妥当な金額とするのが相当である。
したがつて、休業損害は、次の計算式により、金四四万三一九一円となる(円未満切捨て。以下同様。)。
計算式 1,315,162×0.6×205/365=443,191
なお、原告は、休業損害算定の基準として、賃金センサスによる六五歳以上の男子の平均賃金を採用すべきである旨主張するが、原告は本件事故時に満七三歳であり、右金額を超えて休業損害があつたとは認められない。
(六) 逸失利益
甲第二号証、第五ないし第一七号証、原告本人尋問の結果、弁論の全趣旨によると、原告は本件事故により、第九胸椎圧迫骨折の傷害を受けたこと、平成五年三月一〇日、症状固定の診断を受けたこと、原告は右症状固定時には満七三歳であつたこと、自動車損害賠償責任保険において、右後遺障害は、自動車損害賠償保障法施行令別表第一一級七号(脊柱に奇形を残すもの)に該当する旨の認定を受けたことが認められる。
そして、右認定事実の下においては、(五)で判示したのと同様、麻雀店「クラブK」の平成三年の申告収入額の六〇パーセントを原告の寄与割合として、これを基準に、原告は、今後四年間にわたつてその三五パーセントに相当する金額を後遺障害により逸失したものとして、中間利息の控除について新ホフマン法によつて(四年間の新ホフマン係数は三・五六四三)、逸失利益を算定するのが相当である。
したがつて、逸失利益は、次の計算式により、金九八万四四〇二円となる。
計算式 1,315,162×0.6×0.35×3.5643=984,402
(七) 慰謝料
前記認定の本件事故の態様、原告の傷害の部位、程度、入通院期間、後遺障害等、本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、原告が本件事故により被つた精神的損害を慰謝するには、金四四〇万円をもつてするのが相当である(うち後遺障害に対する慰謝料は金三三〇万円)。
(八) 小計
(一)ないし(七)の合計は、金七六二万八二〇三円である。
2 過失相殺
争点3に対する判断で判示したとおり、本件事故に対する原告の過失を三〇パーセントとするのが相当であるから、過失相殺として、原告の損害から右割合を控除するのが相当である。
したがつて、過失相殺後の原告の損害は、次の計算式により、金五三三万九七四二円である。
計算式 7,628,203×(1-0.3)=5,339,742
3 損益相殺・損害の填補
別表の請求額欄記載のとおり、自動車損害賠償責任保険から金三三一万円が原告に支払われたことは、当事者間に争いがない。
この他に、1(一)のうち金一一八万一八九〇円及び1(二)に対応する金四二万六八六〇円を被告が負担したことは、当事者間に争いがない。
したがつて、以上の合計金四九一万八七五〇円が原告の損害から控除されるべきであり、右控除後の金額は、金四二万〇九九二円となる。
4 弁護士費用
原告が本訴訟遂行のために弁護士を依頼したことは当裁判所に顕著であり、右認容額、本件事案の内容、訴訟の審理経過等一切の事情を勘案すると、被告が負担すべき弁護士費用を金五万円とするのが相当である。
第四結論
よつて、原告の請求は、主文第一項記載の限度で理由があるからこの範囲で認容し(遅延損害金の始期は原告の主張による。)、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 永吉孝夫)
別表